いつもTAILORS WORLDを御覧いただき誠にありがとうございます。
編集部の山本佑です。

さて今回は、男性にとって憧れの衣装でもあるタキシード。ウエディングでもそうですが、正式なパーティーや船上パーティーなど、着用のシーンもあこがれる一つの理由ですね。
そんなタキシードですが、いざ誂えたけども、実際の着用機会が思ったほど多くなく、タンスの奥にしまわれて、などのご相談などされたことはないでしょうか。
そのような場合に役立つ秘策(あくまで秘策です)をご案内させていただきます。

それが、「被せ拝絹」という加工です。

この「被せ拝絹」は、アイキャッチ画像でお分かりいただけるように、普通のスーツのジャケットに、タキシードの象徴とも言われる「拝絹地(ハイケンジ)」を襟に被せる加工を施すことです。
*拝絹地については、末尾の方でご紹介させていただきますが、まずは「被せ拝絹」から、どうぞ!!

被せ拝絹加工とは?

こちらは、職人さんが、襟のパターンを取り、それに合わせて拝絹地を裁断し、一針一針丁寧にまつっていきます。拝絹地の素材はメインがシルクですので、デリケートな素材のため、縫う方も非常に神経を使う作業となります。

百聞は一見に如かず。その丁寧で美しい被せ拝絹をご覧ください。

タキシードとして全く違和感ございません。

ピリ付もなく、自然と襟に吸い付いています。

襟裏の処理です。

見返し箇所です。

こちらはノッチラペルに表生地がネイビーなので、濃紺の拝絹地を合わせて。

こちらも綺麗にまつられております。


こちらの被せ拝絹であれば、タキシードとしてご着用後に、まつり糸をほどけば拝絹地が外れますので、また元のスーツとして、ビジネスや普段の場にてご着用出来ます。まさに持続可能なアイテムではないでしょうか。

納期は約10日~2週間。数量や繁忙期などで多少伸びることもございます。
ぜひ、一度ご検討いただければ幸いです。

*注意事項
1.ノッチドラペルの商品に、ピークドラペルの被せ拝絹を施すと、襟先が不安定なため、出来ないことはないですが、あまり綺麗に仕上がりません。
2.拝絹地をお持ち込みされる場合は、必ずボンディング加工されている生地に限ります。
3.正式なタキシードは、腰ポケットの玉縁が拝絹地を使用し、ボタンも同じ拝絹地で包んだクルミボタンを使用しておりますので、”正式”という観点では違う仕様となりますので、予めご理解ください。

拝絹地(ハイケンジ)のご紹介

TAILORS WORLD運営の当社株式会社ヤマモトは、非常に沢山の拝絹地をストックしております。もちろん上記注意事項で記載しております「ボンディング加工」の拝絹地もございます。

そもそも拝絹(はいけん)は燕尾服やタキシード等に使われるラペルの装飾のことです。英語ではショールラペルと呼ばれますが、これは上襟とラペルのつながったもの全般を指すので注意が必要です。素材は基本的に絹を使いますが、光沢がある他の生地、例えばサテンやタフタ等を使うこともあります。

EXCYオリジナルパターンで作成したショールカラーのタキシード

起源は不確かですが、普及時期は1840年代であると考えられています。アルバート公(イギリス女王の夫)が当時正装とされていなかったフロックコートを着こなしてパーティーに出席し、当時男性の正装であった燕尾服が夜間のみの礼装となった。そのため、灯り(街灯)が少ない当時、夜でも光沢により個人が認識できるように襟に絹地を貼り付けたのが始まりとされているのが一般的ですが、それ以前に女性のドレスの光沢に合わすために男性の襟にも絹を付けたという説もあります。

基本的にタキシードと燕尾服にのみ使われるので、昼間に着用するのはマナー違反とされます。ピークドラペルの場合、上襟はジャケットの素材と同じ物を使い、ラペル部分(下襟)のみに拝絹を用いることがほとんどですが、逆の場合もあり、両方につける場合もあります。また、ショールカラーのように襟全体に拝絹が施されているほど正式なものとされています。

下記は山梨県富士吉田市*にある機屋で織られている、王道のシルク100%、両面正絹(ショウケン)地です。朱子と綾の両面で織られており、どちらでも使用いただけます。

以前ブログでご紹介させていただきました富士吉田のジャガード裏地についてはこちら↓を御覧ください。

101

画像では伝わりにくいと存じますが、上品な光沢感となめらかな風合いで、品位を感じさせてくれます。

また、下記は同産地にてシルクとキュプラで織られた交織拝絹地になります。こちらは画像の通り、色展開が豊富でございまして、黒だけでなく、紺はもちろんのこと、白、エンジ、グレー、ブルーとファンシータキシードにもご使用いただけます。

106(黒)107(紺)203(白)503(ブルー)508(グレー)510(エンジ)

続いては、英国は”VANNERS(バーナーズ)”のシルクを使用した拝絹地になります。

下記も、7色展開という豊富な色数でして、しっかりと打ち込まれたシルク生地は、ハリとコシ、そして耐久性の富んだ風合いであり、また発色も非常に美しく、まさに最高級品です。

カラー展開豊富な、本絹朱子織 V970

こちらは同じくVANNERSですが、織り方が琥珀(コハク)織りの拝絹地になります。琥珀織りとは、タテ糸が密に並び、ヨコ糸がやや太く、布面に横うねのある平織りの絹織物です。こちらは3色展開。

琥珀織りのV840

さらに上記の全ての拝絹地と、EXCYで展開するその他の拝絹地や側章を網羅したサンプル帳もございます。実際の光沢や生地感もこちらでご確認いただけますので、ご検討いただければ幸いです。

拝絹地サンプル帳

まとめ

いかがでしたでしょうか。

コロナも少しずつ落ち着きを見せており、フォーマルなシーンも増加傾向にある今日このごろ。
被せ拝絹という加工や、タキシードオーダーに欠かせない拝絹地をご紹介させていただきました。

本ブログでご紹介させていただきました件や、そのほかの内容についてのご注文やお問い合わせ、さらに附属や縫製サービスのお問い合わせはこちらまでお願い致します。