様々なものづくりを発信していく本ブログ。
今回はMade in Japanの生地編という事で、御幸毛織株式会社にフォーカスしました。

TAILORS WORLD 編集部の山本佑です。

御幸毛織株式会社は、明治38年(1905年)創業の非常に歴史のある国内有数のテキスタイルメーカーです。そのメイン工場である四日市工場は、地球環境に優しいエコロジカルな企業であることを目指し、様々な取り組みを通じて、環境の保全を行っています。 原料のウールそのものや洗い工程で使用する天然せっけん、水道水ではない伏流水(地下水)を汲み上げて使うことなど、自然の恵みをそのまま生かすようなものづくりにつながる、その取り組みは多岐にわたります。
御幸毛織の目指す未来の姿は“地球にやさしい企業であること”なのです。今後も継続的な改善により、さらなる環境負荷の低減に努めて行きます。

御幸毛織四日市工場の取り組み ① 「 整理工程 -石けん- 」

洗絨工程において、生地の風合いを決めるのに石けん(石鹸)は非常に重要です。
御幸毛織は未だに添加物なしの天然油脂成分から作られる天然石けんを使用していますが、実は天然石けんは使いこなすのが非常に難しいのです。水の中に含まれるカルシウムやマグネシウムと言った硬度分が多く含まれると石けんカスと呼ばれる化合物が発生しやすく、この石けんカスは一度発生すると除去するのが難しいため、きれいな水とゆっくりと長いすすぎ時間、そして機械操作に関する熟練のノウハウが必要不可欠なのです。手間の掛かる天然石けんですが、服地の極上の風合いには欠かせないと考えています。
多くの服地メーカーは泡切れが良く、少ない洗剤の量で洗浄でき、すすぎの水も少しで済む「合成洗剤」を使用するのですが、 天然の油脂成分から作るせっけんの方が、ウールのふくらみをより一層引き出してくれるのです。
天然繊維のウールには天然成分からできた石けんが絶対だと、御幸毛織は信じます。
生産性が低く、コスト面で不利でありながらも御幸毛織は誇りと哲学をもって天然石けんを使用し続けています。 使用後、排出された天然石けんは水と二酸化炭素にすぐに分解され、自然に再び還ってゆきます。天然石けんを使用することは、「エコロジカル」でもあるのです。


御幸毛織四日市工場の取り組み ② 「 天然木の洗い棒 」

御幸毛織のエコでオーガニックなモノづくりの象徴とも言えるものに「天然木の洗い棒」があり
ウールを洗う工程で、この棒で服地の表面を摩擦するわけですが、天然素材であるウールを自然の木で擦り洗うことは、まさにオーガニックなモノづくりのシンボルとも言えるでしょう。
この洗い棒は、北海道産の「アサダ」と呼ばれる木でできており、御幸毛織はわざわざこれを取り寄せ、表面のギザギザを彫ってもらい使用しています。
人の手で時間を掛けて一本ずつ彫られたこの「洗い棒」を御幸毛織は年間に 5 本以上も消費してしまいます。一見、非効率のように見えますが、洗い上がりの風合いにはやはり天然木が一番なのです。


御幸毛織四日市工場の取り組み ③「 整理工程 -水- 」

使用されるすべての水は化学消毒された一般的な水道水ではなく鈴鹿山系由来の伏流水(=地下水)です。費用と手間を掛けて消毒された水ではなく、自然のままの水が地面を掘るだけで得れます。費用と労力を掛けていない水を得ることは、御幸毛織のサスティナビリティを語るうえで重要です。 勿論、使用後の水はいくつもの排水処理槽を通して浄化され、地下パイプを通して排出されます。
四日市水系の水は透明で良質なので、国の「名水 100 選」にも選ばれています。特に近隣を流れる智積養水(ちしゃくようすい)はつとに有名です。また、日本酒の酒蔵がこの地に集中していることも水質の良さを証明する一つだと言えるでしょう。

御幸毛織の使用する鈴鹿山系からの湧水のひとつ「蟹池」

その他の活動

国際規格 ISO14001 に適合した環境マネジメントシステム規格に則り活動しています。
規格内容が大きく変わった 2015 年版の移行審査もクリアし、2018 年 8 月に登録認証を更新しています。

グループ内の安全環境アセスメント
御幸毛織は所属している東洋紡グループの一員として安全環境管理レベル向上のため、「地球環境推進委員会」が当社規定による多岐にわたるチェックリストによる毎年の審査を受け、クリアするとともに、3 年に 1 回現地監査を受け入れ、管理レベルの維持・向上を図っています。
御幸毛織は安全環境管理の状況が良好である、環境へのインパクトリスクが非常に低い企業であると確認されています。

循環型社会への取り組み
東洋紡グループでは、「埋立廃棄物量が総廃棄物排出量の 1%未満」をゼロエミッションの目標とし取り組んでおり、グループにおける埋立率は 0.64%となりました。
御幸毛織では埋立てねばならないような廃棄物は全くありませんので、埋立率0%なのです。

化学物質の管理
使用化学物質のリスク把握と低減を目的に、有害化学物質の代替・削減、作業環境・周辺環境整備、製品含有化学物質管理などに取り組んでいます。
御幸毛織は、従来使用していたパークロロエチレン系のドライリーニグ溶剤の使用廃止や、今後、法規制が想定される C8 フッ素系撥水剤の代替えなど、地球環境負荷に対しインパクトのより少ないものへの切り替えを積極的に取組んでいます。


サスティナビリティとしてのリサイクル
御幸毛織は 2018 年度「三重のお茶娘染め」を開発。従来廃棄されていた四日市産の日本茶の搾りかすをウールの染色に使用しました。地域への貢献活動の一つになっています。

従業員への環境意識を向上教育/啓発活動、地域貢献活動
社内での環境セミナー・新入社員に対しての環境教育など、独自のカリキュラムで環境教育を推進しています。
また、オフィスの省エネのため、「冷房 28℃/暖房 20℃温度設定の徹底」「クールビズ/ウォームビスの推進」「照明機器のこまめな消灯」「不要時の電気機器の電源 OFF」などによる CO2 排出量の削減を進めています。
御幸毛織は、地域社会との信頼関係を維持することは、企業活動の基本と位置付けています。情報公開と地域活動へ積極的に参加し、コミュニケーションを密にすることが大切だと考えています。その一環として近隣の小学校児童約 140 名が毎年工場見学しております。また御幸毛織社員による工場周辺クリーンアップ活動を実施しています。
敷地の一部を従業員が畑として利用しています、御幸毛織の工場で出来た農作物が社員の食卓を彩っています。


まとめ

さらに詳しくは、御幸毛織株式会社のHPもご覧ください。
冒頭にも書いたように、MIYUKIのものづくりへのこだわりが詰まっており、それが伝われば幸いです。

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