今回は、冬物の生地の代表格である、ベルベットについて書きたいと思います。

ベルベット、ベロア、別珍、コーディロイなど呼び方は様々ありますが、見た目ではよく似ていて違いが分かりづらいですが、一体何が違うのでしょうか。それぞれの違いを生地の紹介を交えながら説明するとともに、縫製を依頼する際の注意点などをまとめてみました。

TAILORS WORLD編集部の山本佑です。

パイル生地とは

パイル生地は糸がループ状に出ている生地の事で、一番わかりやすいのはタオルです。
ループをカットすることで起毛を作っているものがカットパイルで、ベルベット、ベロア、別珍はすべてカットパイル生地です。
摩擦に弱いデメリットがありますが、柔らかい肌触りが魅力です。

ベロア

ベルベットとの大きな違いは「編みもの」だということです。
編み物なのでストレッチ性があります。
洋服の他にもバッグやヘアアクセサリーにもよく使われています。

7052 ベロアストレッチ

ベルベット

ベロアによく似ていますが、ベルベットは「織物」です。
経糸でパイルを作る「縦パイル織」に分類されます。

もともとは絹糸から作られていましたが、今では絹の他にレーヨンやキュプラでも作られています。
ビロードとも呼ばれますが、ビロードはポルトガル語で、英語ではベルベットです。
ちなみに日本語では天鵞絨(てんがじゅう)といいます。

厚みがあって柔らかく、起毛が長めで上品な光沢があるのが特徴です。
水分に弱かったり、たたんで放置しておくとパイルに癖がついてしまうなど、デリケードでやや扱いづらい素材ではありますが、
高級感があり、ドレスなどフォーマルなお洋服に取り入れれば一気に格調高くなることでしょう。

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3780ポリエステルベルベット マットタイプ

別珍

もともとは絹で作ったベルベットを真似て綿で作ったものです。
ポリエステルでも作られます。

ベルベットとの違いは、緯糸でパイルを作る「緯パイル織り」で、ループ状の糸をカットすることで起毛を作ります。

起毛が短めで光沢感はベルベットより少ないですが、ベルベットよりは丈夫で、カジュアルファッションにも取り入れられます。

コーデュロイ

別珍と同じく、緯糸でパイルを作る織り方ですが、縦畝があるのが特徴です。

畝の幅には色々あって、1インチに何本の畝があるかをWALE(ウェル)という単位で表わされます。
コール天と呼ぶ人もいますが、これはcorded(うね織の)velveteen(天鵞絨:和名でビロード)からきているそうです。

コーデュロイの特徴である畝が保温性を高めてくれるので、秋冬のジャケットやパンツにピッタリです。
よくテーラー様でお使いになられているのは、英国のBrisbane Moss(ブリスベン・モス)のコーディロイでしょうか。

SB11100 広巾11Wコール

縫製依頼をする際の注意点

毛並の指示をお忘れなく!!

画像はコーデュロイの逆毛と並毛の画像です。
弊社でもご注文頂いた際、オーダーシートにご指示無ければ、都度確認させて頂いております。
逆毛の方が、色が濃く見え綺麗に見えます。
並毛は白っぽく見え、ムラの様にも見えますね。

先日、海外テーラー様分で同素材のオーダーが入った際に確認しました所、並毛とのご返答。
伺ってみると、ワールドスタンダードは並毛の様です。
日本では、一般的に逆毛の指示が多いように思います。
今まで疑いもしなかったですが、常識が覆された一瞬でした。

セレクトショップでヨーロッパのドレスブランドの既製品を見ても確かに並毛でした。


並毛裁断での仕立て画像です。
逆毛裁断は色が濃く見えドレッシーに見え、逆に並毛はカジュアルな雰囲気になります。コーデュロイに関してはそもそもカジュアル素材ですので、並毛もこなれた雰囲気が出て良いですね。

フル毛芯仕立ては不可!?

ベルベットやコーディロイなどの毛並みがある素材は、ラペル箇所まで入る「フル毛芯」は芯据えする際の、ハ刺しミシンが入れれないため、ハーフ毛芯や、胸増芯のみの軽い仕立てのみとなります。*イージーオーダー工場の場合

ステッチも入れれない!?

上記同様で、毛足があるので、ステッチ(AMFやミシン)を入れる際に毛足がミシンに絡まり、きれいに入れられないので、こちらも不可の工場が多いと思います。

まとめ

似て非なるベルベット、別珍、ベロアについて説明しましたが、いかがでしたでしょうか?

ベロア: パイル生地の編み物
ベルベット: 縦パイル織り
別珍: 緯パイル織り
コーデュロイ: 緯パイル織りで畝のあるもの

パッと見だけでは違いが分かりにくいですが、違う生地だという事が分かりました。
また、各縫製工場によって多少の違いがあるにせよ、このような毛並、毛足があるき時には依頼する際に注意が必要ですね。

また、上記内容についてのご注文やお問い合わせ、そのほか附属や縫製サービスのお問い合わせはこちらまでお願い致します。