こんにちは、TAILORSWORLD新人編集の小菅です。

前回に引き続き、アイリス様の工場見学の様子をご紹介します!今回は【真鍮・メタルボタン編】です。


【金属専門 矢島工場】

今回ご案内くださったのは、丁寧でわかりやすい説明が魅力の秋山さんです。

矢島工場には金属生産部・SE生産部があり、金属ボタンの製造やメッキ加工が行われています。

真鍮製メタルボタンの製造工程は、以下の通りに分類されます

  • 一枚もの
  • 被せ
  • ダイキャスト:溶かした金属を金型に流し込んで成形する方法
  • ラバーキャスト:溶かした金属をゴム製の型に流し込んで成形する方法

今回は、実際に見学した「一枚ものボタン」と「被せボタン」についてご紹介します!

【一枚もの】

「一枚もの」は、ブランクと呼ばれる厚みのある角チップに柄をプレスし、丸抜き、裏切削したものに足をつけて作られます。

この足は「ロウ付け」という加工方法で取り付けられます。

この「ロウ」は価格が高騰しており、現在ではなんと1缶約33万円にもなるそうです。

【被せボタン】

「被せボタン」は、裏座となるパーツと表のパーツの2つを合わせて作られます。この合わせ作業は「カシメ」と呼ばれます。

この工程では、足の角度と表面の柄の角度が揃っていないと、見た目のバランスが大きく崩れてしまいます。

このカシメ作業には、最新のテクノロジーが導入されていて、カメラが柄を瞬時に認識し、自動で正確にカシメることが可能です。

一方で、サイズが異なる製品などは、職人の方々の手作業で丁寧に仕上げられています。

機械と人の作業が分けられていることで、幅広い要望に対応できる柔軟性が信頼につながっています。


【ボタン豆知識】

ところで、被せボタンの裏に穴が空いている理由をご存知でしょうか?

これは、メッキ加工の際に内部にたまった水分を抜くための穴です。何気なく見ていたボタンにも工夫が込められているんですね。


【めっき加工】

ここまでで成形されたボタンは、洗浄や艶出し・艶消しなどの表面処理を経て、いよいよメッキ加工に入ります。

めっきのプロフェッショナルである酒井さんから、専門的な工程を丁寧に教えていただきました。

めっき加工は大きく「乾式めっき」と「湿式めっき」の2種類に分けられ、手法や使用する素材によってかなり細分化されています。

(一度踏み入れると、その奥深さに魅了されてしまう“めっき沼”の世界です!)

アイリス様では主に「バレルめっき」という湿式の手法が用いられています。

「バレル」とは、小さな穴の空いた樽のような容器のことで、これをメッキ液に漬け、回転させることで中の製品に均一にメッキを施します。

バレルメッキで気をつけなければならないのは、ボタン同士がぶつかったりすることで傷がついてしまわないようにすることです。そこでダミーを全体の40%~50%ほどいれることで傷がつくことを防いでいます。

【重要ポイント】使用されるメッキ液の見分け方

緑色:ニッケル

青色:銅

透明:シアン(シアン化合物)


【ABS樹脂へのメッキ】

今回の見学で特に印象的だったのが、「ABS樹脂」へのメッキ加工の前処理です。

プラスチックにメッキをつける…? どんな仕組みなのか興味が湧きます。

まず、ABSとは以下の3つの化合物から構成される合成樹脂です。

A:アクリロニトリル

B:ブタジエン

S:スチレン

この中の「ブタジエン」をエッチング加工し、触媒を浸透させることで、銅が吸着できる状態になります。

*腐食作用を利用して、金属やガラスなどの素材を溶解・除去し、目的の形状を作り出す加工方法

この銅がついて初めて、金属としてのメッキ加工が可能になるのです。

ただしこの加工は、使用する薬品に有害物質を含むため、対応できる工場が限られています。

アイリス様では安全性に十分配慮したうえで、こうした特殊な加工も実現しています。

【仕上げ工程と品質管理】

その後は、防錆処理や塗装といった仕上げ工程に移りますが、ここでも徹底した品質管理が行われています。

たとえば、ウレタンを吹き付ける工程では、製品に微細なゴミが付着しないよう、作業室への人の出入りを最小限に抑えるなど、環境管理が徹底されています。

このようにして厳しい管理体制のもとで仕上げられたボタンだけが私達の手元に届けられています!!


✂ まとめ

今回の見学では、専門的な内容を丁寧にご説明いただき、大変勉強になりました。

まだまだメタルボタンの世界は奥が深く、一歩足を踏み入れたばかりですが、今後もさまざまなボタンに触れながら、皆様にその魅力をお届けしていきたいと思います!

最後になりますが、矢島工場の皆様、ご案内いただいた小野様、山田様、本当にありがとうございました!

そのほか附属や縫製サービスのお問い合わせはこちらまでお願い致します。